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掲載日
2016年2月2日更新

Dr. Bamba図13日高千呂露川流域地質踏査図(番場猛夫原図) 日高の鉱物資源の話はこれで終わりですが、もうひとつお話ししておきたいことがあります。それはヴィリデイン(Viridine)という稀産鉱物の話です。
 ヴィリデイン(Viridine)という鉱物は世界的に産出がきわめて稀で、1889年に南部スウェーデン産のものが始めて記載されて以来70数年の間に、世界において僅かに7個所の産地が知られたに過ぎないのです。これまでに知られた産地を発見の順に挙げれば以下の通りです。南部スウェーデン(1889)、ドイツ(1911)、ベルギー(1933)、北部スウェーデン(1947)、ロシア(1948)、ベルギー領コンゴ(1954)、そしてアメリカ(1959)なのです。したがってここに述べる日高地方千栄産のViridineは世界で8番目に発見されたもので、本邦においてのみならず、東南アジアにおいて初めて知られた例であることは注目に値するのです。
 その産地は図13に示すように日高千霹呂川上流で、千栄部落の東東南約10kmに発達する衝上断層の東方1kmの地点です。ここは日高変成帯の西縁にあたり種々の緑色片岩からなっています。その一部にViridine、紅簾石を含む石英片岩が出現します。これが問題のviridine片岩なのです。

表6日高千栄産Viridineの化学成分 このviridineの化学成分を表6に示します。またこの岩石の顕微鏡下でのスケッチを図14に示します。図14の鉱物構成は大部分が石英と絹雲母ですが、この図ではその輪郭は読みとれません。viridineは屈折率が高いので浮き上がって見えます。黒い鉱物は赤鉄鉱でその他の鉱物はすべてviridineです。
北海道の日高地方にはこんなに珍しい鉱物が出るのです。この岩石は日高山脈館に標本として展示されていますからご覧下さい。Viridine-紅簾石-石英片岩は「世界でもっとも美しい岩石」と言われています。そのわけはピンク色の紅簾石と、緑色-金色〈多色性)を示すviridineとが織りなす顕微鏡下での美しさをいっているのです。