令和7年度町政執行方針
Ⅰ まちづくりの基本姿勢
令和7年日高町議会3月会議の開会にあたり、私の所信を申し述べさせていただき、町民の皆様をはじめ議員各位のご理解とご協力をいただきたいと存じます。
昨年からの出来事では、元日に発生した能登半島地震、そしてその復旧の最中に奥能登豪雨と立て続けに大きな災害が発生しました。近年の災害は、線状降水帯など短時間で集中的な豪雨による被害となる傾向が強まっております。今後の気候変動の影響により、水害の更なる頻発化・激甚化が懸念され、それに伴い洪水発生頻度が多くなることも予想されることから、町においても災害に強いまちづくりを目指し、防災への取組と減災対策の強化を進めてまいります。
国民生活においては賃金は上昇傾向にあるものの、諸物価の高騰が止まらず、実質賃金は減少しているとの指摘もあり、経済状況は依然として厳しさを増しております。このような状況ではありますが、少しでも住民の皆様の経済的負担を軽減する取組を推進してまいります。
町内の出来事では、昨年6月に日高山脈襟裳十勝国立公園の誕生という大きな出来事がありました。この国立公園というネームバリューを町政各般にも活かせるような取組も考えていきたいと思います。
こうしたことを念頭におきながら、第2次日高町総合振興計画の目標である「いきいきと働き、学び、安心と笑顔で暮らせるまち」の実現のため、各種施策に積極的に取組んでまいります。
Ⅱ 主要政策の推進
次に町政を推進するための主な政策について、申し上げます。
1 地域産業の振興
はじめに、第一次産業を取り巻く環境は、不安定な国際情勢を要因とする肥料・飼料・燃油を中心とした生産資材価格が高止まり、厳しい経営状況が続いています。
こうしたことについての国などの対策事業には常に注視し、活用可能な施策を見いだしてまいります。
水稲や施設野菜などの耕種農業につきましては、国において水田活用直接支払交付金がルール化され、水田の畑地化が推進されています。これまで長年にわたり続いてきた水田活用直接支払交付金の対象とならない農地が多くなることが予想されることから、農地の保全に資する安定的な農産物の生産と収益向上につながる取組を、より一層推進してまいります。
また、主食用米の需給バランスが崩れ小売価格が高騰しており、政府は備蓄米の放出が決定されたところですが、極端な価格変動は農家所得に直結するため、米価を左右する政府政策を注視してまいります。
畜産業につきましては、酪農では乳製品の需要低下や円安等による飼料価格の高騰が経営を圧迫する要因となり、肉用牛生産においても依然として生産資材価格の高止まり、さらに、市場の取引価格の低下も経営を圧迫する状況となっております。
酪農、肉用牛生産ともに厳しい状況が続いているところでありますが、農業改良普及センター等と連携して世界情勢に左右されないために自給飼料の比率を向上させるとともに、規模拡大や省力化への取組に対しては、畜産・酪農収益力強化整備等特別対策事業等を活用しながら、基盤整備への支援を続けてまいります。
また、本年10年ぶりとなる全日本ホルスタイン共進会が北海道で開催されることになり、当町からも出陳が予定されていることから、酪農の活性化につながることを期待しております。
新規就農者につきましては、本年も複数名がミニトマトやアスパラの施設野菜による営農を開始する見込みとなっており、経営が安定するまでの間、引き続き支援してまいります。
また、担い手人材確保のため農業人フェアなど就農支援イベントにおいて積極的なPRを行い、地域おこし協力隊の制度を活用しながら、新規就農者の育成を図ってまいります。
有害鳥獣対策につきましては、北海道及び日高管内各町と連携したエゾシカ・アライグマ等の有害鳥獣駆除事業を通年で行うことにより農業被害の増大は抑えられていますが、依然として多くの被害が出ている現状であります。今年度は駆除及び捕獲活動の強化として有害鳥獣駆除奨励金の一部を増額した上で、引き続き駆除事業を行い、より積極的な農業被害の防止対策を推進してまいります。
軽種馬生産につきましては、ここ数年軽種馬市場の状況として、日高町産馬の売却総額は令和元年度の27億1,000万円から令和6年度は35億円とほぼ右肩上がりで好調を維持していますが、飼料価格の高止まり、担い手・労働力不足という課題も抱えています。生産対策では、公益社団法人日本軽種馬協会で行っている優良繁殖馬促進事業や軽種馬生産基盤整備対策事業の助成事業の活用など引き続き「強い馬づくり」 「馬産地の維持・発展」 「担い手不足対策」 「獣医師不足対策」について、オール日高の取組として、要望活動を国など関係各方面に対して行ってまいります。
ホッカイドウ競馬につきましては、令和6年度発売額が543億円となり2年ぶりに発売額レコードを更新し、5年連続で500億円を超える結果となりました。日高管内の基幹産業である軽種馬産業を支える産地競馬に対し、引き続き運営主体である北海道軽種馬振興公社への職員派遣、門別競馬場改修事業への協力や町内飲食店を中心とした食イベントの企画などによる支援を継続してまいります。
また、門別競馬場の整備につきましては、比較的順調に進行しております。厩舎エリアにおいては、今年中の完成が予定されているほか、引き続き業務関係施設の整備が行われることとなり、この事業によりホッカイドウ競馬事業の持続的な発展と馬産地としての更なる活性化に期待するところであります。
林業につきましては、日高町森林整備計画に基づき森林の持つ多面的・公益的な機能が充分に発揮されるよう、町有林においては森林環境保全整備事業等による間伐などの保育事業を計画的に実施してまいります。
また、民有林につきましては、豊かな森づくり推進事業や日高町森林整備推進事業の活用を促進し、更新時期を迎えた未整備森林所有者へ適切な森林施業の実施を勧奨するとともに、森林環境譲与税を財源とした事業の実施と町内での木材利用を推進し、地域林業の活性化に努めてまいります。
漁業につきましては、海水温上昇が主な要因とされるさけ・ますの不漁や、燃油・漁具の高騰が長期化していることから、漁業経営も依然として厳しい情勢であります。この局面からの脱却は、自然が相手であり非常に難しいことですが、ひだか漁業協同組合をはじめとした関係機関と連携し、水産資源の増殖による資源の確保及び漁業者の経営安定など漁業生産基盤の安定に資する施策を継続してまいります。富浜漁港の水産生産基盤整備事業につきましては、新たな防砂堤整備事業なども含めて国・北海道に要望してまいります。
また、令和3年に発生した赤潮被害についても、国の調査事業が継続される見通しとなっており、町としても支援を続けてまいります。
商工業につきましては、中小企業、小規模事業者の経営安定化と事業投資の誘発を図るため、融資を受けた資金に対する利子や保証料の一部を支援する経営資金支援制度を継続するほか、日高町商工会の安定的な運営を引き続き支援してまいります。
また、北海道共通ポイントカードとしての利用やスマートフォンアプリを活用したカードレス化により利便性が向上する、ひだかカード会のEZOCAカード導入事業に対し必要な支援を行い、地域の消費拡大を図ってまいります。
ふるさと納税につきましては、納税サイトを追加するこことで特産品の情報発信機会を増やすほか、新たなに門別競馬場のバックヤードツアーなど門別競馬場とのコラボ企画による返礼品の開発に取組み、寄附者の掘り起こしに努めてまいります。
観光振興につきましては、日高町観光まちづくり協会をはじめ関係機関・団体と連携し、町内の観光資源の活用や広域での取組により魅力ある観光を推進してまいります。
また、観光振興のサポート役として、地域おこし協力隊や地域活性化起業人制度等を活用し、多様な施策・課題に対応してまいります。
沙流川温泉ひだか高原荘につきましては、既に新しい指定管理者が決定し、4月からの全面再開に向け、準備を進めてまいります。
日高山脈襟裳十勝国立公園につきましては、登山者などに限定される日勝山岳地区と沙流川温泉ひだか高原荘、日高国際スキー場、日高沙流川オートキャンプ場、国立日高青少年自然の家という観光・研修施設が集積する国立公園利用拠点の北日高岳地区、さらに南部の里平山地区と3つの地区が町内にあります。そのため、持続可能な利用と質の高い自然体験活動を図る目的で環境省、林野庁の協力を得て、関係団体などを構成員とする協議会を設立しました。今後は利用拠点の整備・改善及び自然体験活動促進に関する計画を協議会で策定するとともに、引き続き町内へのビジターセンター整備などを環境省並びに関係省庁に要望してまいります。
2 生活環境の整備
地域公共交通につきましては、昨年度策定した日高町地域公共交通計画に基づき、持続可能な新たな交通サービスとして「すこバス」の実証運行を進め、本格運行に向けた検証を進めてまいります。
また、日高地域広域公共バスにつきましては、広域公共交通路とダイヤの最適化を図り、引き続き持続性のある交通体系となるよう、交通事業者及び日高管内各町と協力し協議を進めてまいります。
富川市街地活性化事業につきましては、複合施設建設工事が終盤を迎え、令和7年10月のオープンに向けて、順調に工事が進んでいます。交通ターミナル機能のほか、観光情報発信機能の強化、町民のコミュニティの場、日高町の魅力創出の拠点として運用を開始してまいります。
門別温泉とねっこの湯につきましては、閉館期間が長くご不便をおかけしていますが、引き続き施設及び設備の改修を進め、より利用しやすい施設としてまいります。
道路整備につきましては、安全・安心を確保するため、通学路の整備や計画的に未改良・未舗装道路の整備に取組むとともに、劣化・損傷した路面及び排水施設の補修に努めてまいります。
河川整備につきましては、近年の気候変動等による相次ぐ河川氾濫などを踏まえ、本年度より緊急浚渫推進事業計画を策定し、河川の樹木伐採や堆積土砂の除去など適切な維持管理に努めてまいります。
橋梁整備につきましては、定期的な点検により健全度を把握するとともに、適切な修繕工法の検討、計画的な修繕を行い、ライフサイクルコストの縮減に努めてまいります。
まちづくりにつきましては、本年3月に策定される第2次日高町都市計画マスタープランに基づき、将来の人口規模に応じた都市の構築に向け、複合施設を中心とした公共交通やコミュニティの創出を図るなどコンパクトな市街地形成を進めるとともに、日高町らしい住みよいまちづくりに努めてまいります。
町営住宅整備につきましては、新栄団地建替事業を令和10年度まで計画しており、本年度は1棟4戸の建設を予定しております。また、既存住宅の改修を引き続き進め、長寿命化に資する改善や適正な維持管理に努めてまいります。
移住定住促進の取組につきましては、新たに日高町に移住する方を対象に、新築または中古住宅の取得に対する補助を実施し、転入者の増加を図り、地域の活性化に努めてまいります。
下水道事業につきましては、ストックマネジメント計画に基づくマンホールポンプ所の更新、門別浄化センター及び富川浄化センターの統合に向けて基本設計・詳細設計を実施し事業の進捗を図ってまいります。厚賀地区においては、維持管理適正化計画を策定し、施設の効率的かつ適切な維持管理に努めてまいります。
上水道事業につきましては、重要給水施設配水管整備事業による耐震管への更新のほか、水道未普及地域解消事業による庫富地区への水道管整備を推進してまいります。
また、水道スマートメーターの導入を積極的に行い、DX化の推進及び効率的かつ適切な維持管理に努めてまいります。
日高地区の簡易水道事業につきましては、各施設の適切な維持管理を行い、安心・安全で安定した水道水の供給に努めてまいります。
また、料金改定を含む中長期の経営計画(経営戦略)に基づき、簡易水道事業の健全な経営に努めてまいります。
3 安心して暮らせるまちづくり
健康づくりにつきましては、日高町第4次保健計画に基づき、とねっこ館での運動指導、健康教育や保健指導など各年代に対応した健康寿命の延伸、ウォーキングイベントの実施や生活習慣病予防教室など健康増進と疾病予防について取組んでまいります。
感染症予防対策につきましては、帯状疱疹予防接種が予防接種法の定期接種となったことから、対象者に60歳から64歳までの免疫機能障害がある方を含め実施するほか、各種ワクチンの接種費用助成を継続し、疾病の予防に努めてまいります。
子育て支援につきましては、第3期子ども・子育て支援事業計画に基づき、乳児家庭訪問や養育支援訪問などの育児支援、認定こもど園や保育所など教育・保育の提供体制の確保、子育て支援センターや児童館などの子育て支援体制を充実させながら、安心して子育てできる環境づくりに努めてまいります。
新規事業としまして、乳幼児等医療助成事業の助成対象を高校生の通院まで拡大し、併せて保護者の所得制限を廃止いたします。
また、おむつ・ごみ袋支給事業を実施し、広く子どもの健康増進と子育て世帯の経済的な負担軽減を図るほか、結婚に伴う新生活を経済的に支援するため、結婚新生活支援事業を実施してまいります。
児童福祉につきましては、児童虐待の防止、発達支援事業など児童相談所や広域で運営している発達支援センターと連携し、迅速かつ適切な対応を図るとともに、各関係機関も含め情報の共有や連携を進めてまいります。
保育サービスの提供につきましては、誰でもこども通園制度の導入に向け、民営の幼稚園や認定こども園とも連携し準備を進めるとともに、安心な保育の確保に努めてまいります。
また、老朽化した保育所につきましては、引き続き、これからの施設の在り方も含め検討を進めてまいります。
高齢者福祉につきましては、令和8年度までの日高町高齢者保健福祉計画及び第9期介護保険事業計画に基づき、高齢者が住み慣れた町で安心して暮らし続けられるよう、充実した在宅福祉サービスの提供と安定した介護保険事業の運営を目指してまいります。
また、高齢化による地域の人手不足や介護人材の確保など地域課題の解決に向けた普及啓発活動や担い手育成事業を進めるとともに、高齢者が地域で長く自立した生活が送られるよう介護予防事業の充実を図り、関係機関と連携し地域包括ケアシステムを推進してまいります。
国民健康保険事業につきましては、健康保持の推進として、町内医療機関等と連携しながら、特定検診や生活習慣病等の重症化予防の推進、医療の適正化に取り組み、健康寿命の延伸に努めてまいります。
また、事業運営に当たっては、北海道国民健康保険運営方針で示される標準保険料率になるよう段階的な税率改正を進めていくとともに、基金を創設し安定した事業運営に資するよう努めてまいります。
門別国保病院につきましては、経営改善が大きな課題となっています。このため、地域ケア病床への一部転換や介護医療院・小規模老健化により、健全で継続可能な経営を目指すとともに、地域医療の中心を担う病院として、安心かつ信頼される医療提供体制の整備に努めてまいります。
日高国保診療所につきましては、日高地区の医療機関として、現状の受診患者数・動向を踏まえ、持続可能な医療体制の確保を図るとともに、経営面では、課題を洗い出し安定的な経営に向けて必要な取組を行ってまいります。
防災対策につきましては、引き続き日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等に伴う津波からの避難施設や避難路等の具体的な事業を検討するとともに、避難所生活関係備蓄品等の計画的な整備を行い、災害に強い町を目指してまいります。
また、近年激甚化、頻発化する豪雨災害や地震・津波災害を想定した住民参加型の訓練を実施し、避難経路の確認や災害時の情報伝達など、避難意識の向上を図るとともに、迅速な避難態勢の整備に努めてまいります。
脱炭素事業に向けた取組につきましては、日高町地球温暖化対策実行計画の事務事業編に基づく事務事業を継続するとともに、町民、事業者及び行政が一体となって二酸化炭素排出量を実質ゼロとすることを目指すゼロカーボンシティ宣言を令和6年9月2日に行い、引き続き、町の自然環境や社会的条件に応じた温室効果ガス排出量削減の具体的な施策を定める区域施策編の策定に取組んでまいります。
DX推進に関する取組につきましては、日高町公式LINEが開設されたことにより、防災や子育てをはじめとした行政情報のきめ細かな発信が可能となりました。今後も町ホームページやSNSと連携し、利便性の向上につながるよう運用してまいります
さらに、町民全員がデジタル技術の恩恵を受けられるよう、高齢者スマートフォン購入補助事業とスマートフォン教室の開催を継続してまいります。
DXによる行政の効率化につきましては、全ての行政事務に対して業務手法の見直しを行い、デジタルを活用した業務改革に取組むとともに、組織全体のITリテラシーの底上げのため職員研修を実施し、今後のデジタル社会をけん引する職員の育成に取組んでまいります。
4 持続可能な行財政運営
行政運営につきましては、日本経済の先行きでは賃金の増加等によるサービス価格の上昇が見込まれます。
また、世界の不安定な政治情勢により、更なる物価高騰の可能性もあり、不透明な状況が続くと想定されます。当町においては、必要な住民サービスを将来にわたって安定的に提供していかなくてはなりません。限られた財源ではありますが、必要とされる各種施策事業を着実に進めるように努めてまいります。
Ⅲ 予算案の概要
令和7年度の予算編成につきましては、国の令和7年度地方財政計画では、景気回復により、地方税及び地方交付税が増加、臨時財政対策債を廃止と見込み、一般財源総額の交付ベースを令和6年度と比較し1.7%増額と見込んでいるため、日高町においても、町税及び地方交付税等を令和6年度より増額で計上しております。
さらに、当町は幼児教育・保育の無償化、学校給食無償化事業の継続、高校生の外来受診無償化並びに人件費の増、物価上昇に伴う各種委託料・扶助費の増及び他会計への多額の繰り出しなど歳出予算の抑制が難しい状況ではありますが、各会計の予算編成は、限られた財源のもと財政の健全化を念頭に置きながら、第2次日高町総合振興計画の目指す将来像実現に向けた様々な施策や事業を盛り込んだところであります。
一般会計の予算規模につきましては、富川市街地活性化事業、アイヌ政策推進交付金事業、とねっこの湯改修事業、町道整備事業及びDX推進事業などを予算計上し、前年度との比較では8億800万円、6.5%減となり、歳出総額が116億500万円となりました。予算規模は縮小しましたが、多額の基金や地方債などに依存する非常に厳しい予算編成となったところであります。
Ⅳ むすび
以上、令和7年度の町政執行に臨む、私の所信を述べさせていただきました。
私の町政2期目も間もなく3年が経過し、任期も残り約1年となりました。町政では様々な課題がありますが、私の町政運営の姿勢は「まちを元気に」であります。これからも、たとえ人口が減少しても決してまちが活力を失うことがないよう、さらに鋭意努力し、町政運営に取組んでまいります。
新年度におきましても、町民の皆様、議員の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。
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