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縄文時代の遺跡にストーンサークルというものがあります。日本語で環状列石、文字通り「石を輪のように並べた遺跡」です。当時の建築物にも木材はたくさん使われていたのでしょうが、その中で形をとどめやすかったのは石だったということなのでしょうか。国内でいくつか知られており、北海道にもあります。たとえば小樽から余市にかけて、忍路・西崎山・八幡山のストーンサークルが知られています。
このなかで西崎山のストーンサークルへは行ったことがあります。海抜70mの小高い丘の上にあり、木々の向こうには日本海が見渡せるとても気持ちのよいところでした。大小100個ほどの石が並べられています。中にいくつか石組みがあります。腰ぐらいの高さの細長い石を立て、その周りに小石を丸く敷き詰めた日時計のような形をしていました。お墓、あるいは儀式的な場所として使われたのだろうと見られているようです。
同じ余市町内の八幡山ストーンサークル。この中の一番南にある石組みでは、最初の発見時(昭和43年)に石の下からヒスイの玉が見つかっています。同じ余市町内の別の遺跡から日高ヒスイの勾玉が見つかっていますので、もしかしたらストーンサークルにあったのも日高産のヒスイだったかもしれません。
石はたしかに土木工事に適した素材です。それにしても、たとえば河原から数多くの石を高台まで運び上げたのだとしたら、その労力は馬鹿になりません。その場所を選んだのにはおそらく意味があるのでしょうが、どんな基準で持ってくる石を選んだのか、日時計のような形にどんな意味があるのかなど、作った人に聞いてみたいものです。
ストーンサークルはほかの地域、たとえば秋田や青森でもみつかっています。より大規模に発掘されていて、お墓らしい「本体」部分とその周囲の建物や落とし穴跡などが発見されています。天体観測に利用されたのではないかとも言われたりしていて、想像すると面白いものです。
海の中に遺跡があると聞くと、「ほんと?」という反応が多いのではないでしょうか。沖縄の与那国島で最近、海底遺跡の調査が進められています。しかもここは巨石文化といってもよいような、巧みに石を利用した大規模な遺跡です。また、道内でも水中に没した遺跡が知られています。
大きく分けて二つあります。
網走湖には、湖岸から200mほど離れたところに湖底遺跡があります。昭和38年と40年に調査が行われ、その結果「土器から見ると縄文時代(約7000年前)にシベリア大陸から渡ってきた集団のもので、魚の漁が主体で網も使われていただろう」との報告が出されています。
一方与那国島では、かなり大規模な遺跡が調査されています。
島の沖合い約100mのところで、ひとつの丘を削り取って作られている大構造物です。大きさは東西250m、南北150m、高さ26m。基底部は水深25mの海底で、頂上は1mほど水面に顔を出しています。ぐるっと取り巻く石の回廊、階段、大岩を組み合わせてできている壁、テラス状の美しい広場などなど、自然にできたとは思えない光景がたくさん紹介されています。
これらが人工物である証拠としては、
をはじめとして、たくさん挙げられています。加えて、このあたりの海底には鍾乳洞がたくさんあります。鍾乳洞は弱酸性の雨水や川の水が石灰岩の基盤を溶かしてできるもので、陸地でなければできません。しかもこの鍾乳洞の中から石器が見つかっていて、この辺が陸地だった頃があった証拠とされています。
年代測定と海水面の変化を考え合わせ、今から1万年前(もしかしたらもっと前)に遺跡が使われていたという推定が出されています。もしこれが本当なら、縄文時代の初期に非常に高度な文化が存在したことになります。ちなみに青森では1万6千年前の土器(もちろん世界最古)が見つかっているし、それほど信じがたい話ではないと思うのですが・・・。この遺跡は人類史が大きく変わるきっかけになるかもしれませんね。
川は、山と海とを結ぶ重要な役割を果たしています。最近のテレビで、えりもの漁師さんたちが中心になって苦労して植林されてきた様子が紹介されていました。陸地の森が丸裸になって土砂が流出することで、漁業にも大きな影響が出ることがよくわかる番組でした。
また、熊石町をはじめとする全国で磯焼けが報告され、漁業に大きな影響を与えています。原因はいろいろ議論されていますが、そのうちのひとつに山や川とのかかわりが指摘されています。たとえば、(1)上流で大規模な木の伐採が行われる。あるいは、(2)ダムやコンクリートの護岸がされる。陸地(森)で水に溶け込むはずのミネラル分が海に流れなくなり、海の生態系のバランスが崩れて一種類の藻だけが繁殖する事態が起きるのではないか、という考えです。
これまではコンクリートが主流でした。コンクリートは強くてどんな形にもなり、原料もたくさんあって安いと大きなメリットがあったので、川や海の護岸にたくさん利用されてきました。
もちろん、治水の必要から検討導入されてきたものです。一方で、そこになかった素材を持ち込み、違う流れを作り出すことで、生態系を壊してきた面は否定できないだろう。現在、今までのやり方に代わる方法もいろいろと提唱されつつあります。たとえば、
これらは、周りの生物たちを重視した見方が基本になっています。多様な生物が暮らしやすい環境は、ひいては人間も暮らしやすい環境ではないでしょうか。
この前の秋(2000年11月)に大阪大学理学部教授池谷さんが地震予知に関する本を出版されました。面白い事例がたくさん載っていましたのでご紹介したいと思います。なお書名は「大地震の前兆こんな現象が危ない」という新書です。もし目にされる機会がありましたら、ぜひお手にとってみてください。
なまずが騒ぐと地震が起きるという言い伝えはよく聞きます。このような言い伝えに加え、最近大地震が起こった地域(兵庫県南部、トルコ、台湾、鳥取西部など)ではさまざまな現象が報告されています。いくつかご紹介すると、
その他たくさんあります。
池谷さんはもともとは電子工学を修められた方です。異常現象の原因は断層で岩が壊れるときに発生する電磁波ではないかと考えて、動物から植物から電気機器からさまざまな再現実験を行っています。先に述べたいろいろな現象も、実験で再現し解説されてます。
電磁波は珍しいものではありません。雷になれば発生するし、携帯電話からも出るし、ディスプレイなど家電製品からも出ています。ただ、地震のときの電磁波は瞬間的(パルス的)なものなのに対し、携帯電話などから出る電磁波は連続的で、様子が違います。また動物などは、人間が作り出している電磁波には慣らされているので普段は騒ぎません。
あるいは、人工衛星から電磁ノイズの観測をすることも計画されています。フランスは2002年にその目的で人工衛星を打ち上げるのだそうです。
しかし上記のような研究が日本で主流になっているかというろ、そうではありません。よく聞かれる反対意見は「偶然」「こじつけ」「錯覚」などです。
報告されている前兆現象を解析すると、
と、すべてが錯覚やでっち上げというには無理があります。なおかつ電磁波などの犯人もめぼしがつけられつつあります。ただ、確かに難しいのは"異常を見たからすぐに地震が起こるわけではない"ことです。動物の体調不良もあるだろうし、雷が原因の電磁波も起きるでしょう。そんなわけで池谷さんは、地震の電磁波とほかのノイズを見分ける装置を開発して観測を行うことを呼びかけています。
一年間地学的なお話をするにあたって、プレートテクトニクスやプリュームテクトニクスの考え方を何度もご紹介してきました。ただし、これらの理論は『現時点では一番ありうる』『賛成する人が多い』というだけに過ぎません。主流ではありませんが、プレートテクトニクスではない考え方をしている研究者もいます。
地球膨張説:
地球が堆積で行くと1・5倍から5倍(人によって違う)に膨れたという説。万有引力が減って膨れた、あるいは熱の状態が変わったので物質の様子が変わり、膨れたと考えます。
サージテクトニクス:
地球ははじめの3月4日期間膨張し、その後1月4日期間(11億年前以降)は縮んだと考えます。最初に膨れたのは地球内部の放射性元素から発生する熱のせいで、その後は崩壊熱が減って縮んだとみます。縮むとき、地表は水平に押し合いへしあいし、内部では垂直方向にぎゅうぎゅう押されます。
これらを含め、決定的に間違いとは言い切れないし、絶対に正しいと言い切れる理論もありません。なぜなら、マントルの石ひとつにしても直接取ってきた人はいないのですから証明しきれないのです。つまりどの理論も発展途中といえるのではないでしょうか。
それはさておき、日本は世界でも有数の活発な活動地帯です。災害は決して人事ではありません。活断層が近くにないからと思っていても、地表では見えていないだけかもしれません。神戸の一般の人たちは、あのあたりで地震が起きるとは思っていない人が多かったはずです(住んでいたときは私もそう思っていました)。そんなわけで、個人の住宅建設から、公共施設の建設から、事故があっては困るような原子力関連の施設まで、みんなで情報をオープンにして話し合う必要がある国だと思います。
デメリットはありますがその分温泉などでメリットも十分感じられますし、地の利を十分楽しみながら目配りもしていきましょう。