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2016年2月2日更新

5月6日 日高山脈付近にある美しい鉱物、役に立ってくれる鉱物たち:
日高ヒスイ

アナウンサー:和田さん

日高町にも“ヒスイ”があるんです。

【緑の美しい宝石、ヒスイ】

日本でも古くから親しまれており、縄文時代の遺跡からは勾玉など数多くの遺物が発見されているヒスイ。
中国でも、ヒスイは玉と呼ばれて珍重されてきました。台湾の博物館には、“翠玉(すいぎょく)白菜”という見事な細工が展示されています。これはもともと宮中に飾られていたもので、緑と白の混じり具合をうまく生かして、白菜とキリギリスが生き生きと彫られています。

【ヒスイは本来無色透明で、白っぽいものが多い。】

純粋なヒスイは元来無色透明です。
“ヒスイ”として売られているものは緑や薄紫などをしているのでおやっと思う方もおられるでしょうが、これは鉄やクロムなどの元素がわずかに混ざっている部分なのです。きれいに色づいた部分を選んで、宝石として用います。

【一般にヒスイは2種類ある、と言われる。】

硬玉(こうぎょく)、軟玉(なんぎょく)と、ヒスイはふつう2種類に分けられます。

  1. 硬玉
    その名も“ヒスイ輝石”で、輝石という鉱物の一種。新潟県糸魚川地方のヒスイはこれ。宝石として売られているヒスイは硬玉が多い。ミャンマー産が有名。
  2. 軟玉
    角閃石という鉱物の一種。硬玉に比べるとやや地味な緑色をしているという。硬玉と同様に緻密な構造をしており、装飾品などに用いられる。中国の細工物は軟玉を使ったものが多い。

【さて、日高で採れるヒスイは】

今から遡ること30数年前。当時函館に住んでいた久保内寛一(くぼうちかんいち)さんという方が考えました。
『日高には緑色の石が多いから、ここには必ずヒスイがあるぞ』
そこで、日高町の村上晃(むらかみあきら)さんに探してくれるようお願いします。

2年後の1966年(昭和41年)、久保内さん、村上さん、高野玲子(たかのれいこ)さんの3人は、ついにヒスイのような石を発見します(日高町内、千呂露川支流のペンケユクトラシナイ沢)。

北大の八木健三博士と、ちょうど来日していたアメリカのコールマン博士が観察し、「確かにヒスイだ」とお墨付きを出しました。これは新聞でも写真入りで取り上げられ、“日高でヒスイが採れた”と一躍有名になります。

その後の詳しい研究で、厳密に言うと日高ヒスイは、先のどちらの“ヒスイ”でもないことが明らかになります。硬玉と同様に輝石の仲間ですが、輝石は輝石でも『透輝石』という種類だったのです。

しかし、
・ 織物状の構造が本当のヒスイとよく似ていること(つまり細かい細工に耐える)、
・ 緑の美しい具合がヒスイそっくりであること、
これらを考慮して、番場猛夫博士(当時地質調査所)が論文を書いて公表しました。これが国際的に宝石として認定されるために必要な手続きになるからです。
こうして“日高ヒスイ”も、第3のヒスイとしてめでたく宝石の仲間入りを果たしました。

昭和40年代~50年代にかけて、日高ヒスイはブローチやネクタイピンなどに広く加工されました。しかしこの時にほとんど取り尽くされてしまって、今ではこの場所にはヒスイはほとんど残っていません。

久保内さんたちの見つけたところでは無くなってしまったが、ほかでも、同じような条件のところがあれば見つかる可能性も無いわけではありません。ですから、売れるほど採れるかどうかは別として、あなたもヒスイを見つけられるかもしれませんよ。

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5月13日 日高山脈付近にある美しい鉱物、役に立ってくれる鉱物たち:
ガーネットとルビー

アナウンサー:和田さん

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ガーネット

日高山脈では、ガーネットは

  • 縞々模様の“片麻岩”という名前の石・・・これはもともと堆積岩だった
  • 黒っぽい“角閃岩”という名前の石・・・こちらはもともとは玄武岩・はんれい岩などの火山性の石だった、

などの中に、わりあい普通に入っています。

【名前の由来】

日本語では「ざくろ石」といって、その名の通りざくろの実から連想した名前です。
ガーネットという言葉も、ラテン語でざくろを意味する言葉から来ています。
ざくろの実の赤い粒々のように、深い赤色をしたころころの結晶が代表的です。

【色】

ただしガーネットは、赤いものばかりではありません。
結晶の色というのは、含まれる化学的な成分と非常に関係が深いものです。大雑把に言うと、

  • 鉄分(Fe)が多いと赤
  • マグネシウム(Mg)が多いと薄いピンク
  • クロム(Cr)が多いと緑
  • カルシウム(Ca)が多いと黄褐色

というふうな具合で、さまざまです。世界には虹色に輝くガーネットまであるそうです(これは最近発見されたもので、美しいものが少なくてたいへん高価だとか・・・)。

【生まれた時の環境がその姿を決める】

ガーネットは、地球の殻である地殻から上部マントルにも渡るような、とても広い範囲に存在している鉱物です。結晶ができる時の周りの環境・・・つまりその時の温度や圧力、付近にあった化学的成分など・・・によって、どんなガーネットができるかが決まってきます。
たとえば日高変成帯(日高山脈)では、温度が高ーくなるタイプの変成作用を受けたところであるために、鉄・マグネシウム・アルミニウム分の多いザクロ石ができます。
つまり逆にいえば、今あるザクロ石の化学成分を調べることで、その岩が昔どういう条件にあったか?を調べられるわけです。

【マントルでもできるガーネット】

かんらん岩という石は上部マントルから来た石だと考えられていますが、この中にもガーネットができることがあります。
様似町の幌満かんらん岩には、ザクロ石そのものは入っていないけれど、ザクロ石が周りの条件の変化に合わせて輝石やスピネルといった鉱物に分解してしまったあとが観察されています。この観察を受けて、学者の間では「このかんらん岩は、上部マントルの中でもとても深いところから上がってきた石だ!」という議論がされています。

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ルビー

こちらはそう簡単には見つかりません。
アポイ岳にある変成岩の中に、もともとははんれい岩だった石があります。これらの中に赤いルビーを含んだ石があったの、金沢大学で研究していた森下さんが見つけました。昨年の北海道新聞でカラー写真付きで紹介されています。

ルビーという鉱物は、幅広い条件のもとでできます。
このはんれい岩の場合は、一旦できた石がさらに深いところに引きずり込まれた可能性があることがルビーからうかがえます。含まれる鉱物の組み合わせなどから検討すると、ルビーができたのははんれい岩が一度固まったあと。できたはんれい岩がマントルの中まで沈み込み、このときにルビーが出来たのではないかと考えられるのです。
このような「一旦できた石が深く潜っていく」とする考え方はあるが、それを裏付ける「物的証拠」はまだ少ないです。そういう意味で、このルビーの発見は貴重なものです。

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ルビーを見つけるのはたいへんですが、ガーネットならルビーよりはだいぶ見つけやすいです。
山で石を見るコツは、川の近くを探すこと。石は表面が風化するとなんだかわかりにくいので、上流から転がってきた石だとか、あるいは川そのものが磨いている岩肌なども、石の表面が磨かれていて観察がしやすいのです。
ただし、滑ったり流されたりという事故には十分ご注意くださいね。

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5月20日 日高山脈付近にある美しい鉱物、役に立ってくれる鉱物たち:

アナウンサー:福田さん

北海道各地で金が採れた時代があります。
日高山脈でも、300年以上も昔から東西両側で金の採集がされていたという記録が残っています。

今でも、大樹町の歴舟川では毎年砂金堀大会が開かれています。
静内の山深くにも、金があります。まず金のでき方などをお話して、静内で調査をした専門家の話をご紹介しましょう。

【金の採れ方は2種類】

金は、山で採れる「山金」と、川で採れる「砂金」があります。
山で採れるというのは、つまり鉱山の鉱脈から掘り出すもの。砂金は、山金が風化して細かくなって川へ流れ出たものです。

【砂金にはどでかいやつがいる】

枝幸では、かつて769gという、たいへん大きな砂金が採れたことがあります。
このような大きな「砂金」は他にも見つかっているが、「山金」でこんな大きなものは非常に珍しいです。
大きな砂金を割ると、中に石英の粒などが入っていることがあります。そこで、こういうものを核として金が大きく成長したのではなかろうか?と考えられています。

【山金のできかた】

では山で採れる山金。こちらは岩と水の相互作用でできます。
地球内部からやってくる“熱い”水が、まわりの岩石から成分を溶かし出します。この水は、冷えたところまでやってくると、溶かした成分を結晶としてそこに落としていきます。これは砂糖水や塩水が、冷たくなると結晶を晶出させるのと同じです。

【2種類の山金】

さて、山金には2種類あります。
まず『銀黒型』は、金や銀などのこまかーい粒子が集まって黒っぽい脈のように見えるものです。精錬が必要です。
一方の『老脈型』は、石英の脈に金の粒が入っているものです。石英の脈は透明~白っぽいですが、ここに金の粒がきらっとしているのは感動的です。取り出すのが簡単なので、古くはこの老脈型が主流でした。ただし規模は小さいです。

【静内の場合】

静内の山奥では老脈型の金がでます。石英脈の中に金の粒がみえるのです。
玄武岩の大きなかたまりの中に石英の脈があり、この中から金が見つかっています。玄武岩という石には金の成分がまるで含まれていないので、どこか違うところで金の成分を溶かし出した高温の液体が、この位置まで来たときに温度が低くなり、金の結晶を形作った、ということなのでしょう。

ここはテレビで紹介されていましたが、かなり険しい山奥です。取りに行くには相当な覚悟が必要です。

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5月27日 日高山脈付近にある美しい鉱物、役に立ってくれる鉱物たち:
クロム

アナウンサー:和田さん

【宝石にもなっているクロム】

日高町で見られる「スピネル」という鉱物は、真っ黒い色をしています。ところがこの鉱物の仲間には、透明で美しいものもあるんですね。特に美しいものは宝石(半貴石)として流通しています。このあたりのスピネルはクロム分を含むことが多いのですが、今日はそのクロムのお話をしましょう。

【生活に密着しているクロム】

クロムはレアメタル(=希少金属。量が少ないか取りだしにくいかで生産量が少なく、高価な場合が多い。)の一種で、貴重な資源の一つです。用途はこんな感じで:

  • ステンレスなどの合金
  • 耐熱合金(耐熱性の材料にはほとんどのものにクロムが配合されています)
  • メッキ
  • 皮なめし用の薬品
  • 陶磁器の顔料
  • 研磨剤
  • 化学薬品
  • 溶鉱炉用の耐火物

幅広いです。

日高町周辺でも、昭和12-3年頃から昭和30年頃にかけて、クロム鉱の採掘が行われていました。ここのクロム鉱石には酸化クロム分が60%も含まれていましたので、品質のいい材料として軍需関連など多くのものに使われました。
ちなみに、町内には当時の名残が残っています。「サンゴの滝」という観光スポットがありますが、これは人工的に掘られた滝です。もっと奥でクロムを採掘していたのですが、その運搬用の道を川沿いに作るために、山に穴を開けて水を迂回させたのです。

【どんなところにある?】

クロムは、蛇紋岩に伴って見つかります。どうやってできるのかをこれからお話します。

【どうやってできた?】

蛇紋岩のもとになっているかんらん岩は、マントルと作っている石だと考えられています。かんらん岩は、たとえば日本列島の地下などで部分的に融けて、マグマを作ります。
マグマはだんだん上昇してきますが、その途中で少しずつ中に結晶ができてきます。一番最初に結晶ができるのが、クロムスピネルとかカンラン石などの鉱物です。これらカンラン石が地下にいるうちに集まって岩石になってしまうと、かんらん岩になります。クロムスピネルが集まった部分もでてくるわけですが、これがクロムの鉱床になります。

【山脈館に展示してあるクロム】

山脈館でも、クロムの鉱石を何点か展示してあります。そのうちの一つを紹介しましょう。
爪の先くらいの丸くて黒いぼちぼちがたくさん集まった様子が見られます。これはその独特の形から、『豆さや状の(ポディフォーム)』と呼ばれるタイプのクロム鉱石です。展示してあるサンプルは、豆さや状のクロムのまわりにくっついているかんらん岩が“かんらん岩のままである”ことが大きな特徴です。というのも、かんらん岩という石は蛇紋岩という石に代わってしまいやすい性質があるので、地表に出てくるまでの間にすっかり蛇紋岩になってしまっていることが多いのです。クロムの周りがなくかんらん岩のまま残っているサンプルは世界的にも珍しく、日本ではここ(岩内岳)だけで見つかっています。

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