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記念すべき第1回目。お相手してくださるアナウンサーさんは肥土(あくと)さんでした。
あらかじめファックスで内容をお送りしてから、金曜日の晩に打ち合わせの電話がかかってきます。
私の書いたレジメを見た肥土さんは一言、「わかりにくいですねえ」。
・・・たしかに。5分間で、しかも耳だけで情報を把握できなければいけないというのはたいへん難しいことでした。
私はといえば、初めての事態で舞い上がり気味。「どうしましょうか?」と言われても頭がまわりゃしません。肥土さんはきっと、『コリャダメだ』とお思いになったのに違いありません。結局、誘導尋問状に言いたいことを引き出していただいて、打ち合わせが終わりました。肥土さん、その節はたいへんお世話になりました。
というわけで、以下がしゃべった内容です。細かい言い回しなどは放送時と違っている場合があります。
さて第2回。まだ緊張が走り、電話がくるまでそわそわと落ち着きません。
レジメももう一つなじまず、かなり修正をかけて本番に臨みました。
アナウンサーは中川さん。終わってからわざわざ電話いただきまして、ありがとうございました。
現在有珠山では、マグマが上がってきて地面を盛り上げることによって断層ができていますね。
日高の場合も、原因は違うけれども、大きな断層ができました。その結果山脈ができた、というのが先週のお話でした。
O: では中川さん、石同士をつよーく押し付けながらこすり合わせてやると、しまいにどうなると思いますか?
N: 天然での話ですか?・・・えっと、砕けるんでしょうか。(←中川さん、ご協力ありがとうございました)
O: そうです。砕けてしまいます。
ある程度以下の温度ならば、石は砕けていきます。
ところで、地下に潜っていくと、あたりはだんだん高温になってきますね。
さらに石というのは、いろんな鉱物やら古い石のかけらやら、さまざまな材料でできています。これらは、温度や圧力などの条件が同じであっても、それぞれ違った振る舞いをします。
では、温度が高くなってきた地下では、山を作るような大きな断層のそばの石はどうなるでしょうか?
日高山脈には、西側に大きな断層があります。
このそばでは、断層が動いたときにそばにあって、かつ当時300℃くらいの温度だった石が見えています。これらは、ただ砕けるだけじゃなく、新たに結晶を作り直して少し違う石になっています。
肉眼で観察すると、白い長石がぼちぼちとしている周りが縞々になっています。顕微鏡で見ると長石は一部割れたり欠けたりし、一方縞々の部分は細かい石英や雲母が並んでいるのがわかります。これは温度によって鉱物の振る舞いが違うためで、長石はまだ砕ける温度、一方石英や雲母は自分の体を小さな結晶に作り変えてしまう温度だからです。
このような石は「マイロナイト」と呼ばれます。
マイロナイトとは別に、もう少し浅いところでできる石があります。地震の化石と考えられている、「シュードタキライト」という石です。
断層が地震で急激に動いたときに、周りの石が壊れるのと同時に摩擦熱で石が一部融けます。この「砕けたかけら」と「融けた石」が、周りの割れ目に入っていきます。「融けた石」より回りの岩のほうが温度が低いので、一瞬のうちに冷やされてまた石になります。
日高でもこの「地震の化石」が観察できます。
この石を見ていると、当時の地表はどんな様子だったろうか、被害を受けた動物はいたのだろうか?としばし不思議な感じがしました。
現在でも、どこかで大きな地震があればおそらく、地下深いところではこうした石ができているだろうと考えられるわけです。
アナウンサー:市川さん
日高山脈では、“かんらん岩”が見られる場所があります。
かんらん岩は、その名の通り『かんらん石』という鉱物を多く含みます。マントルを作っている石だ、と考えられています。
ちなみにかんらん石のきれいな結晶は、ペリドットという名の宝石です。8月の誕生石にもなっているんですよ。
・重くて、
・高温に耐える。
・風化に強い。
・ついでに美しい。
こんな特徴を持つことから、かんらん岩は建築資材、製鉄関係、鋳物砂などとして広く使用されています。
かんらん岩の採石場は、日本で2ヶ所だけ=日高町岩内岳と、様似町のアポイ岳です。
マントルという深いところにあるかんらん岩が地表に出てくるには、いくつかの方法があります。たとえば、
(1)火山のマグマがつれてくる
マグマが上昇するときに、まわりにあるかんらん岩のかけらを引っ掛けてくることがあります。
秋田県の目潟火山(一の目潟など)が有名です。
(2)大きな断層ができる
非常に深いところまで広がっている断層の働きで、深いところの岩石が見えている場合。
日高山脈で見えるのはこのタイプで、先先週お話した『山脈を作った大きな断層』沿いに何ヶ所か岩体があります。
かんらん岩は、ある程度の温度(ある程度といっても、300℃や400℃くらいは必要です)と水分があると「蛇紋岩=じゃもんがん」という石に代わります。地球の深部から上昇してくる間に蛇紋岩になってしまう、ということがよくあるのです。
でも、日高山脈で見られるかんらん岩は“新鮮なまま”=つまりあまり蛇紋岩にかわっていない、ことが大きな特徴です。
中でもアポイ岳周辺は世界的にも有名で、様似町では2002年8月26日~9月3日まで、かんらん岩の国際学会が開催される予定です。
かんらん岩は、クロムやマグネシウムなどを他の石に比べて多く含みます。そのため、特殊な植物しか生息できません。
だから、「かんらん岩でできている山」=たとえば、アポイ岳や、日高町にあるチロロ岳西峰などでは、カトウハコベやカムイコザクラなどの特有の高山植物が群落を作っています。
アナウンサー:中村さん
地震は、断層部分で地面がずれるために起こります。
地震予知を目指して、これまで数々の研究が進められてきましたが、今日はその一部をご紹介しましょう。
それぞれの断層には、一度ずれてから次にずれるまでの周期が大体決まっています。
各断層の周期を見つけ、大きな地震の起きる時期を見極めようという方法が一つ目。
周期って何を見ればわかるだろう?・・・・・・
こういったことを組み込んで、地震予知のための総合的なモデル作りが始まっています。
あるいは、もっと別の立場から地震の前兆を見ている人がいます。
Van(ヴァン)法
ギリシャではVan(ヴァン)法というやり方が開発されました。
地球には電流=地電流が流れています。
ところで岩石というものは、破壊されるときに弱い電磁波を発生します。この電磁波は、地球に流れている地電流に影響を及ぼすのです。
その電流の変化の度合を観測してやれば、地震が起きそうかどうかがわかる・・・というのがVan法の考え方です。
日本でも研究している人がいまして、おそらく日本でも適用可能であるだろうと考えられています。ただし、日本はギリシャに比べて電気的なノイズがとても多く、観測が難しいのです。また観測網の整備をしないと実際の予知には有効でないので、まだ課題は残されています。
宏観異常(こうかんいじょう)現象
あるいは中国では、宏観異常(こうかんいじょう)という現象も組み込んで地震予知を考えています。
宏観異常現象とは、自然や動植物などの異常のことです。地震雲、発光現象、地下水の異常、動物の異常(人間を含む)、地電流異常などさまざまなものを含みます。近年では、テレビ・ラジオをはじめとする電子機器の異常も伝えられています。これらのふだんとの違いを広範囲に読み取っていき、地震予知へとつなげます。
日本でも、阪神淡路大震災をきっかけに宏観異常が知られるようになりました。
岡山理科大の弘原海(わだつみ)清教授によって、阪神淡路大震災の時の多くの体験談がまとめられています。
大気イオンの濃度が地中の小さな破壊現象(つまり地震に繋がる)と密接にかかわっていて、さらに、大気イオンの濃度が異常にあがることがさまざまな宏観異常現象の原因になっているのかもしれない。このように、異常現象のみを集めるのでなく、原因まで視野に入れた研究が進められています。